デジタル円関連の「掘り出し物」を探していたら、思った以上に深い話になった

銘柄分析

以前の記事で、デジタル円(CBDC)関連株を10銘柄ピックアップしました。その中から「時価総額1000億円以下」という条件で絞り込んだところ、残ったのは3社。アステリア(3853)SRAホールディングス(3817)、そしてフィンテック グローバル(8789)です。

今回はこの3社のうち、特に気になった2社――「なぜか株価がやけに安いフィンテック グローバル」と「実は中身がかなり面白いアステリア」を、決算の数字を中心にじっくり掘ってみました。専門用語はその都度かみ砕いて説明していきます。

第1章:フィンテック グローバル(8789)――数字だけ見ると「割安な優良株」

株価は約120円。投資の世界で言う「低位株」(株価が低い銘柄。一般的に500円未満を指すことが多い)の典型例です。まずは財務指標を一覧で見てみましょう。

指標数値
株価約120円
時価総額約242億円
PER(株価収益率)約5.19倍
PBR(株価資産倍率)約1.75倍
ROE(自己資本利益率)約33.7%
ROA(総資産利益率)約17.1%
配当利回り約4.0%

PER(株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標。低いほど割安とされる)が約5倍、ROE(株主のお金をどれだけ効率的に増やせているかを示す指標)が約34%という組み合わせは、本来なら「市場から過小評価されている優良株」に見える数字です。

直近の業績はかなり好調

2026年9月期の中間決算(4〜9月)では、売上高80.11億円(前年同期比+17.9%)、営業利益25.53億円(同+45.1%)、純利益31.92億円(同+147.3%)と、利益の伸びが売上の伸びを大きく上回る決算でした。自己資本比率も50.6%まで上昇しています。通期の会社予想は売上182億円(前期比+26.1%)、営業利益42億円(同+23.3%)、純利益27億円(同+27.2%)です。

数字だけ見れば「増収増益・高ROE・低PER」という申し分ない内容。それでも株価が約120円のまま低迷しているのには理由があります。

株価が上がらない5つの理由

①利益の質が「単発」に依存している。主力の投資銀行事業は、事業承継案件への出資を回収するビジネス。回収のタイミングがバラバラなので、四半期ごとの利益にムラが出やすく、市場は同じ評価をつけたがりません。

②テーマパーク事業の財務リスクが長年の重荷だった。同社はムーミンバレーパークの運営にも関わっており、運営会社は長期借入の返済期限を何度も延長していました。ただし2026年3月、ムーミン物語の株式を無償譲渡し保有比率を14.98%まで下げる動きがあり(この譲渡に伴い5〜6億円の特別損失を計上)、リスクの一つを切り離したばかりというタイミングです。

③事業の毛色がバラバラ(コングロマリット・ディスカウント)。投資銀行業務とテーマパーク運営、航空機リース、公共コンサルティングが同じ会社の中に混在しています。どの業界の物差しで評価すべきか市場が定めにくく、割安に放置されやすい典型パターンです。

④長年の無配当という「傷」。2017年9月期から2023年9月期まで、実に7期連続で配当ゼロが続きました。2024年9月期にようやく復配したものの、一度離れた投資家の信頼はそう簡単には戻りません。

⑤市場区分と流動性。東証スタンダード市場に所属しているため、大型の機関投資家やインデックスファンドの買いが入りにくく、個人投資家中心の薄い出来高で値段が形成されやすい点も一因です。

つまり「PER5倍・ROE34%という数字は良いのに評価されない」のは、過去の負の歴史が積み重なった結果。ちょうどリスク要因の一つを切り離した直後なので、今後の数字の見直しに注目したいところです。

第2章:アステリア(3853)――本業の数字は手堅い、ブレるのは投資事業

続いてアステリア。まずは2026年3月期(実績)の財務ハイライトです。

指標数値
売上収益33.89億円(前期比+6.9%)
営業利益10.25億円(前期比+31.2%)
営業利益率30.2%
親会社所有者帰属当期利益7.99億円(前期比+35.7%)
1株当たり利益(EPS)48.1円(前期比+37.4%)
自己資本比率約77.7%
時価総額約197億円

営業利益率30.2%という数字は、ソフトウェア業界でも高水準。自己資本比率77.7%という財務の安定感も特徴です。ただし、この「増収率6.9%より増益率31.2%の方が大きい」という伸び方には、後述する投資事業の評価益が関係しています。

そもそも何の会社?セグメント別の数字

本業は企業のシステム同士を「つなぐ」ソフトウェア事業です。主力製品ASTERIA Warp(データ連携ミドルウェア)は、売上収益28.89億円(前期比+5.3%)。サブスクリプション売上だけ見ると前期比+34.2%伸びており、サブスク+サポートで構成される「ストック売上」の比率は7割を超えています。もう一つの主力Platio(モバイル業務アプリ作成ツール)は前期比+28.1%と2桁成長。EAI(企業内システム連携)市場では19年連続シェアNo.1、シェアは約59%で2位の約2倍という独走状態です。

買収したMikoSeaとそのシナジー

2025年9月、ノーコード開発ツール「Click」を展開するMikoSea社を買収しました。買収金額は非公開です。Clickは約2万7000人のユーザーを持ち、累計7万種以上のアプリが開発されている実績があり、ベネッセや小田急電鉄、NTTデータなどが採用しています。PlatioとClickを融合した新製品「Platio Canvas」(大企業向け、月額20万円から)を2025年9月に発売し、個人〜大企業まで対応するノーコードのフルラインが完成しました。

ステーブルコイン事業:JPYCとの提携金額

2026年1月、日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC社との資本業務提携を発表。アステリアがJPYC社に普通株式48万700株(処分価額1株1040円、総額約5億円)を割り当て、対価としてJPYC社からB1種優先株式5万7937株を取得するという、約5億円規模の相互出資です。発表直後、株価は一時前日比17.6%高の1188円まで急騰しました。実際の収益事業としては、企業向け入出金管理サービス「JPYC Gateway」(送金手数料1件8円)がありますが、売上はまだ個別開示されていません。

投資事業のブレ:SpaceX評価益と、その「裏側」の数字

増益の大きな要因の一つが、投資子会社が出資するSpaceX社の評価益です。投資事業セグメントでは2026年3月期に約4.2億円の収益を計上しました。出資額は2022年当時に約2.3億円だったので、この時点で評価額は2倍弱に増えている計算です。

ここで気になるのが「SpaceX分を抜いた本業の実力」です。投資事業の収益4.2億円をそのまま営業利益から差し引いて計算すると:

  • 全社営業利益10.25億円 − 投資事業収益4.2億円 = 本業推定営業利益 約6.05億円
  • 前期(2025年3月期)の全社営業利益は約7.81億円
  • 6.05億円 ÷ 7.81億円 − 1 = 約▲22.5%(本業だけで見ると推定で2割強の減益)

つまり、「営業利益+31.2%増」という公表ベースのヘッドラインの裏側には、本業のソフトウェア事業の伸びだけでは前期並みか、むしろ伸び悩んでいたかもしれないという数字が見えてきます(あくまで投資事業のコストをゼロと仮定した概算です)。

さらに、この評価益はあくまで会計上の見積もりであり確定利益ではありません。別の投資先であるGorilla社は、2024年11月に全株売却し約9億円の最終的な損失を確定させています。投資先がすべて当たるわけではないという好例です。

来期(2027年3月期)の会社予想と、SpaceX上場後の数字シナリオ

会社予想は売上収益37億円(前期比+9.2%)、営業利益11億円(同+7.3%)、期末配当は10円(初の2桁配当)。この予想は2026年5月14日に発表されたもので、6月12日のSpaceXナスダック上場、6月9日に開示された株式一部売却益(約4億円)はまだ反映されていません。

この4億円がどう影響するか、3つのシナリオで数字を整理すると:

シナリオ営業利益(推定)前期比
A:売却益4億円がフル反映約15億円約+47%
B:会社方針通り本業に再投資(最も現実的)約12.5〜13億円約+14〜18%
C:上場後の株価下落で評価損が発生11億円未満の可能性未達リスク

会社側は「売却益が出た場合は本業のマーケティングや製品開発に再投資する」という方針を決算説明会で明言しており、シナリオBが最も現実的と見ています。また上場後はSpaceX株を四半期ごとに市場価格で再評価する必要があるため、株価が下がれば評価損が出るリスクも新たに生まれている点には注意が必要です。

中期経営計画の数値目標と進捗

中期経営計画では売上成長率の目標をCAGR(年平均成長率)8〜12%としており、2026年3月期の実績は+9%とレンジ内をクリア。一方、EBITDA率(利払い・税金・償却前利益率)の目標は25%でしたが、実績は33%と目標を大きく超えて達成しています。「量より質」の改善が計画以上に進んでいる、という評価ができます。

まとめ:2社の数字を並べてみると

銘柄時価総額PER/ROE直近の増益率注意点
フィンテック グローバル(8789)約242億円約5.2倍/約33.7%営業利益+45.1%(中間期)単発収益依存/無配当の歴史
アステリア(3853)約197億円約35〜38倍/約10.1%営業利益+31.2%(うち本業推定は減益の可能性)投資事業の評価益による業績のブレ

同じ「低位・小型株」でも、フィンテック グローバルは「数字は割安なのに過去の負の歴史を引きずる株」、アステリアは「本業の数字は手堅いが、投資事業の評価益で見た目の業績がブレる株」と、性格がかなり違うことが数字からも見えてきました。どちらも「決算ヘッドラインの数字」だけで判断すると本質を見誤りやすい、という点では共通していますね。

アステリアについては、SpaceX上場後の業績修正がいつ出るのか、JPYC関連事業の売上がどこまで開示されてくるのか、引き続き数字を追いかけていきます。

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